ハロメンにバラエティ番組的トーク術は必要か?

 僕はハロメンの「テレビタレントっぽくない」「テレビタレント然としてない」ところが好きなのかもしれない。
 テレビタレントっぽくないというのは、いかにもテレビタレントっぽい受け答え、バラエティ番組独特のトーク術(言い方とか”間”とか)や作法みたいなものを見につけて「いない」ということ。ハロプロにも矢口さんや藤本さんのようにそちらの分野の能力を伸ばして活躍してる先輩もいるけど、全体として見ると他のアイドルたちに比べて”テレビタレント的技術”はそんなに伸ばそうとしてないように見えるんですよね。

 僕はハロプロ以外のアイドルはよく知らないんですけど、Berryz工房が出演したときの『めちゃイケ』(アイドル対抗で運動会みたいなのをしたやつ)なんかを見ると、他のアイドルはちゃんとバラエティ番組の作法に則ったトーク術を身に着けようとしてるように見えました。そういう部分ではハロプロははっきり言って弱いと思います。

 でも、バラエティ番組的な作法を身につけた人って、僕にはなんか均質に見えちゃうんですよ…。あるフォーマットの中だけでやってる感じというか。言い方や”間”で面白いことを言ってる風に見せるテクニックも、それはそれで評価すべき技術だとは思うけど、僕はハロメンにそれを身に付けてほしいとは思わないんですよね。逆に、ハロメンはそこをあまり身に付けてないから、”その人自身”がたくさん見えて面白いんじゃないかとすら思ってるくらいで。

 ハロメンがテレビ番組で成功するのは2パターンあって、最初からバラエティ番組に適応していこうとするタイプと、キャラ一発で出ていって少しずつバラエティ番組の作法を覚えていくタイプがあると思うんですよ。前者は矢口さんやミキティ、後者は辻加護・里田さん・さゆみん・ももち。僕は断然後者のほうが面白くて好きなんですよね(笑)。

 バラエティ的トークを身につけたほうが得なのはわかります。たぶんテレビにもずっと出やすくなる。だから「バラエティ番組的な作法を身につけろ」という人は「戦略的にすごく正しい」と思います。「バラエティ番組的な作法を身につけないとテレビに進出して行けないじゃないか!」と言われば返す言葉もないですからね。

 でも、ハロプロメンバーがバラエティ番組的な作法を身に付けてトークをしてるところを思い浮かべると、どうも魅力的に思えないんですよね(笑)。ハロメンが「押しの強い通る声で」「ちゃんとカットインや間のタイミングを計算して」「テロップに出してもらえそうな言い回しを選んで」喋るんですよ?どうですかね?僕は全然ダメです…。全く魅力的に思えない。

 たぶん今のプライムタイムのバラエティ番組が好きな人なんかはむしろそういうトーク術のほうが好きなのかもしれませんね。だから「ハロメンも身につけろ」と言う主張はもっともだと思います。ただ、僕はせっかくのハロメンの個性豊かな話し方がそうやってバラエティ的トークの作法によって均質化されちゃうのは、なんかつらい。メンバー魅力の要素の一つが削られちゃうみたいで。

 例えば鈴木愛理矢島舞美がバラエティ的なトークをする人だったら、と考えると…。もし「アイドルもバラエティに出られるトーク術は必須」っていう考え方の事務所だったら、ない話じゃないですよ。キッズ時代からそういうトークを仕込まれて、今頃はかなり出来上がってたことでしょう。でもハロプロはそういうところじゃなかった。だから今の鈴木愛理矢島舞美がいる。
 これをどう評価するかなんですよね。「早くからトーク術を身につけさせておかないからテレビに出にくくなってるんだ」と見るか、「だからこそバラエティ的トークによって均質化されてない、メンバーその人自身の喋り方が楽しめる」と見るか。僕はどうも後者みたいです。

 なのでバラエティ番組のトーク作法を身につけるのは戦略的には有効だということを認めた上で、僕の中では「ハロメンはバラエティ番組のトーク作法は身につけなくていい」っていう結論になりました。さゆみん・ももち・なっきぃ・かにょんのような「トークを自分の持ち味にしてやろう」って思って頑張るメンバーが自発的にちょくちょく出て来てくれてる今の状態でいいんじゃないかなと。そういうメンバーが全然出て来ないようだと問題ありだけど、現状では出てきてくれてて、つまりハロプロにもそういう下地はあるっていうことだと思うので。
 他のメンバーは、今までどおり、まぁ無理しない範囲で頑張ってトークをしてくれればそれでいいんじゃないかと思います(笑)。「バラエティに適応しなきゃ」みたいに考えてガツガツ勉強しなくてもいいです。そこを追求せず、業界然・テレビタレント然とした立ち居振る舞いに染まりきってないからこそ、今のどこかのどかな愛すべきハロプロの雰囲気があるんじゃないかなって思うので。