金曜ロードショー 映画『おおかみこどもの雨と雪』

 前半はこちらの想像の域を出ない展開ばかりで、正直つまんなかったです…。
 後半、雨と雪が狼の道と人間の道とに別れようとした頃からは面白かったですね。花が雨との別れを予感し、怖れ、拒み、そして受け入れる一連の流れは「親ってこういうところあるよなぁ…」って思って
ジーンと来ました。ただ、前半がタルくて、面白い展開になるまでが長すぎなのは、アニメ映画界で最も優れた監督の一人である細田監督の作品であることを考えると、物足りない感じがしました。

 あと、引きの画とかキャラの表情を見せないカメラワークが多いのも気になりましたねぇ。それは上手く使えば効果的な手法であることはわかるんですけど、ちょっと多すぎて、ただキャラの心理描写の難しいシーンを逃げるために多用してるんじゃないの?って少し勘ぐっちゃいましたね。あまりにも「観客のご想像にお任せします」っていうのが多すぎなんじゃないかと。
 そういうカメラワークのおかげで、スマートな作品にはなってるんですけど、スマートすぎて作品としての「愛嬌」に欠けるっていう感じもします。

 見終わって、『おおかみこどもと雨と雪』が何を言いたかった作品なのかは正直よくわかんなかったです(笑)。単純に「(母)親の愛の深さ」かなぁ、くらいで。通常の何倍もの苦労があったであろうおおかみこどもの子育てを気丈にやりきった花と、花の子離れ(雨の親離れ)という最後のヤマとなったシーンが印象的だったので。行方をくらました雨を追って「あの子は今つらい思いをしてるんじゃないか」「私はまだあの子に何もしてあげられてない」って山中をどこまでも探し回り、そして雨との別れを経験する花の姿は切なくて、僕的に一番印象に残りました。

 でも「おおかみこども」っていう変わった設定にしたからにはもっと他に言いたいテーマがあったんだろうと思って、「そういえば東浩紀さんがこの作品を絶賛してたっけ」って思って、ググって『細田守×東浩紀「おおかみこどもから子育てへ」 #genroncafe - Togetterまとめ』を読んでみました。

 http://togetter.com/li/465580

 「母としての花の孤独」かぁ。
 育児経験がないとこの読み方は出来ないかも…。
 だって、花は女手ひとつでのおおかみこどもの育児や過疎村での自活といったかなり大変なことを、特に大きなトラブルもなく次々とクリアしていくんだもん(笑)。一応、父親からの「苦しいときも笑顔でいれば乗り越えられる」というアドバイスを肝に銘じてたり、狼のおかげで畑が荒らされなくて作物づくりがイージーっていう設定はあるんだけど、それにしても悩まなすぎなんですよね…。人知れず悩んでるようなシーンすら見せてくれない。せいぜい「少しだけ疲れた表情をする」程度なんですよねぇ。これで花の「母としての孤独」を読み取れるような感受性は僕にはなかったなぁ…。
 じゃあ花が全く苦悩を見せないキャラなのかというと、雨が狼として生きる方向に行くことについては、苛立ちから雨に対して声を荒らげたりもしてるんですよね。なのに、おおかみこどもの育児や過疎村での自活にはそんな程度の苦悩すらも見せない。

 あと、上で書いた「引きの画やキャラの表情を見せないカメラワークの多用」もわかりにくさに繋がってる気がします。「母としての孤独」はあまり描かれることのない魅力的なテーマだと思うので、もっと直球なカメラワークをしてくれていれば、育児経験がなくてちょっと鈍い僕のような人にももっと伝わったんじゃないかなって思いました。